熱中症とは?なぜ危険なのか
熱中症とは、高温多湿な環境により体温調節機能が崩れ、体内に熱がこもり、臓器や脳にダメージを与える状態を指します。重症化すると命に関わるため、単なる「暑さによる不快感」と侮ることはできません。
人の体は、体温を一定に保つために汗をかいたり、皮膚の血管を拡張して熱を放出します。しかし、気温や湿度が高いとその放熱メカニズムが機能しにくくなり、体内に熱が蓄積していきます。
熱中症が起こる5つの生理的プロセス
1. 深部体温(コア体温)の上昇
外気温が高く、身体が運動などで熱を産生していると、体温は上昇します。特に高湿度の環境では、汗が蒸発しにくくなり、体表面の熱を逃がせず、体の中に熱がこもります。これが体温調整の初期破綻です。
2. 脱水と電解質の喪失
汗をかくことで水分と共にナトリウムやカリウムといった電解質も失われます。体液の濃度が変化し、血液の循環効率が低下し始め、脳や臓器に十分な酸素と栄養が届かなくなります。
3. 循環不全と低血圧
体は熱を逃がそうとして皮膚の血管を拡張させますが、血液が体表に集まりすぎると、内臓や脳への血流が不足。これによりめまいや立ちくらみ、意識障害が現れます。また、脱水によって血液量が減少し血圧が低下、循環機能がさらに悪化します。
4. 脳機能の障害
血流不足と体温上昇により、脳の温度も上がります。脳細胞は熱と酸素不足に非常に弱く、判断力や集中力の低下、意識混濁、昏睡といった症状を引き起こします。
5. 多臓器障害
40℃を超える高体温になると、体内のタンパク質が熱変性を起こし、細胞が破壊されます。特に肝臓・腎臓・筋肉・心臓がダメージを受けやすく、最終的には多臓器不全に至る可能性があります。
なぜ防げるのか?科学的に正しい予防法
1. 発汗をサポートする水分と電解質の補給
水分だけでなく、ナトリウム(塩分)も補うことで、体液のバランスが保たれます。スポーツドリンクや経口補水液、塩飴などが効果的です。
- 目安:30分〜1時間に1回、コップ1杯(200ml)
- 大量に汗をかいた後は塩分もセットで補う
2. 高温環境に長時間いない
人の体は暑熱順化(暑さに慣れる)に時間がかかるため、急な炎天下での活動は危険です。暑い日は外出を避け、冷房の効いた室内にいることが基本です。
3. 放熱しやすい服装と環境調整
- 通気性・吸汗速乾性のある衣類を着る
- 室温は28℃以下を目安に
- 直射日光を避け、風を通す環境を意識
4. 体調の変化に敏感になる
「なんか変だな」と感じた時点で、すでに体は危険信号を出しています。倦怠感・吐き気・頭痛・汗が止まらない・寒気などは即座に休憩・冷却・補水を。
熱中症になってしまったときの正しい対応
- 風通しの良い日陰または冷房のある部屋へ避難
- 衣服を緩め、脇・首・脚の付け根を冷やす
- 水分と塩分を摂取(経口補水液が理想)
- 意識がもうろうとしている場合は、迷わず119番
まとめ|熱中症は「なぜ」を知れば、防げる
熱中症は「なぜ体が壊れるのか」を知ることで、具体的な対策が明確になります。
水分と電解質の補給、環境管理、体調のセルフモニタリング──これらを徹底すれば、多くの熱中症は未然に防げます。
特に高齢者、子ども、持病のある方は温度と湿度の管理を日常から意識しましょう。
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